工房だより第9回目です。

 

8月が終わって9月に入りました。

ようやく過ごしやすい気温になってきたような感じがしますね。

これからは秋の演奏会シーズンに向けて、また楽器たちに頑張ってもらいましょう。

 

 

さて、ケースに入れているとはいえ、夏の外出・移動では楽器に負担がかかってしまうものです。

エアコンの効いた建物内から、ムッとする屋外へ出て、また快適な電車・バス内を経由して建物の中へ。

寒暖差で人間も疲れてしまうのですから、楽器だって疲れてきてしまうだろうことは想像できると思います。

 

 

もし反応やパワーが少しなくなってしまったなぁと感じる方は、一度お近くの工房やお店へ楽器を持って行ってみましょう。

魂柱や駒に起因する場合や、弦や弓の毛を交換すれば解消する場合もあります。

ひとりではなかなか判断しづらい部分ですので、職人さんや専門のスタッフに定期的に楽器を診てもらうことは非常に有効だと思います。

 

 

今回紹介する楽器は駒とその周辺に原因がありました。

では、その一部をご覧いただきましょう。

 

症状としては、反応が鈍くなってしまったことと、音色が淡泊になってしまったのを解消したいということでした。

まず楽器全体をチェックです。

 

弦は同じ銘柄のものを換えたばかりですし、弓の毛替えも数カ月以内にされているということでした。

弦を換えてたのに、以前のような音じゃなくなってしまったことを心配されていました。

魂柱や駒位置なども規定範囲内ですし、原因として考えられるのが駒とその周りの松脂なのでないかということで、一度弦を外してクリーニングをしてみることになりました。

 

弦を外すと、エンドピン穴から中をチェックできるのですが、魂柱が大きく動いたりしている形跡は見られませんでした。

駒を外しても魂柱は倒れませんでしたし、魂柱が原因とは考えにくいですね。

 

さて、取り外した駒がコチラ。

 

 

良材を使った綺麗な駒です。

側面(2枚目)を見ると、グレーの汚れが駒にまとわりついているのが分かると思います。

1枚目も角度を変えてみると、結構積もっているのが判ります。

指でつまんでいるのですが、ちょっとべっとりしました。

 

長年の使用で松脂が段々と固着してきたのでしょう。

ある時点までは問題なく、駒が駒としてのパフォーマンスを発揮してきてくれたけれど、「これ以上は無理っ!」というところからは、駒が振動を楽器本体に充分に伝えられなくなってしまったんだと思います。

 

人間でいうと脂肪みたいなものですね。

脂肪がつきすぎると運動能力に影響してしまうように、駒も余分な重さが加わるとそのパフォーマンスは落ちてしまいます。

 

前回の毛替えが終わってしばらくした頃から、何かおかしいなぁと感じるようになったそうで、8月の本番前に弦を換えて改善はしたものの、やっぱり違うということでした。

 

ここからは推測ですが、毛替え後は松脂をしっかり塗るので、そのときの松脂の粉が駒やボディに付き、それが夏の暑さで溶けては固まりを繰り返したために、その限界線を越えてしまったのではないかと想像します。

 

 

 

という訳で、クリーニング後がこんな感じです。

木材の繊維や年輪、放射組織なども見えるようになりました。

表板の松脂汚れも、もちろん取り除きました。

 

 

Setupし直して、楽器を弾いてもらいます。

 

 

結果は見事に解消されて、以前のような音と力強さが戻ってきてくれました。

反応スピードも元に戻って、ストレスなく演奏できるようです。

 

意外だったのは、一度弦を外してテンションを取り除いたことで、楽器がリフレッシュされたことです。

クリーニングをしているので、確かに音や反応スピードなどは変わっているのですが、言葉では言い表せない”深みや若々しいハリ”のようなものが新たに生まれた(正確には戻ってきた)のを、私も所有者も感じました。

 

 

 

少し長くなってきてしまいましたが、日々の練習やメンテナンスも大事ですが、楽器もいちどリフレッシュさせてあげるのも大切なのかも知れませんね。

弦を全て外すのは駒が倒れてしまうので、職人や専門のスタッフにお願いしてください。

 

弊社フェルマータ工房なら楽器のリフレッシュも簡単です。

毛替えのついでに、クリーニングや楽器のリフレッシュをご用命ください。

 

 

スタッフ一同お待ちしております!

 

 

 

無料点検や毛替え・調整のご予約は下記の電話番号まで♪
03-3557-7480

毎日暑い日が続きますね。

高校野球全国大会が始まり、夏真っ盛りといった感じです。

台風も沢山日本へやって来ていますので、予想進路にお住いの皆さんはお気を付け下さい。

東京は台風10号がお盆休みの始まりと重なるかもとのことで、ちょっと心配です。

 

 

さて、今日は膠(ニカワ)のお話です。

膠は天然由来の接着剤。

ヴァイオリンではそれぞれのパーツを接着するために使われています。

 

ゼラチンが主成分で、と書くと料理好きの方にはピンとくるかもしれません。

そうです、コーヒーゼリーなどを作るときに使うゼラチンとほぼ同じものと思って構いません。

つまり、ニカワは熱や蒸気で溶けてしまうものなのです。

 

 

ここ数日、楽器の剥がれ修理依頼が続いています。

ひとつはチェロの横板と裏板の剥がれ、もうひとつ指板がネックから外れてしまったという事例です。

 

 

 

 

 

 

 

幸いにも共に大きな被害は無かったので、クリーニング等の下準備をしたのち、再接着をして無事に元通りになりました。

お二人とも楽器を直射日光の中に放置するなどしていたわけではありません。

通常利用をされていて、ケースを開けたら指板が外れていた、久々に弾こうと思ったら異音がした、というものです。

自分の楽器は大丈夫と過信しないで、温度(熱)や屋外・車での移動の際には十分注意して楽器を扱いましょう。

 

 

 

 

 

 

ということで、夏の膠剥がれを防止するために、特に注意していただきたいのは移動時間です。

何度も書いているかも知れませんが、車で移動する際にトランクに入れてしまうのはご法度です。

エアコンが効いた車内後部座席であっても、ケースへ直射日光が当たるのは避けましょう。

(直射)日光には赤外線も含まれていますので、ケースをすり抜けて楽器を暖めてしまうことになるからです。

 

これはケースを背負って移動中にも言えることです。

ご来店されたお客様の楽器点検を行うために、楽器を手に取るとほんのり温かくなっていることもあります。

膠だけでなく、ニスが溶け出すこともありえますよ。

もちろん、前回の工房だよりで書いたように、松脂も簡単に溶けてしまうことは想像できますよね。

 

大切な楽器ですので、夏の陽射しには十分に注意して楽器の管理と持ち運びをお願いしたいと思います。

もし、楽器から異音がし始めたとか、残念ながら膠が剥がれてパックリと口を開けているのを発見してしまった場合は、焦らずに、そしてその部分を触らずに、楽器をお近くの楽器店や工房へ速やかに持っていきましょう。

 

もちろん、フェルマータ工房へお越しいただいても構いません。

剥がれていないか心配なのでチェックしてほしいという場合も是非!

 

場所はコチラの地図をご参考下さい。

 

 

ではこの辺で第8回の工房だよりを終わりたいと思います。

素敵な夏休みをお過ごしください。

いよいよ8月に入りました!

いやぁ〜、熱い暑い日が続きますね。

 

工房だより第7回の本日は、夏といえばの松脂についてです。

この時期に注意してほしいポイントを1つ挙げるとすれば、

 

「松脂は溶けます!そして固まります!」

 

この1点でしょう。

毛替えや点検、調整・修理でご来店いただくお客様のケースや楽器も温かくなっているのが分かります。

 

松脂は演奏する上で欠かせないですが、楽器に降り積もった松脂の粉は、この時期は簡単に溶けていきます。

屋外で長時間移動する場合は特に注意していただきたいポイントです。

 

溶けた松脂の粉は、エアコンの効いた室内に入ってくると(常温でも固まるのですが)、また元の固体の状態に戻ります。

これが何度も繰り返されると大変です。

薄い松脂の層が積み重なって楽器の表面を覆い、マイクロクロスで拭いてもビクともしない頑固な汚れとして表面にこびりつくことになります。

こうなると、ご自身の手で除去するのは大変です。

無理にこすって楽器を傷めたり、ニスまで剥がしてしまったりということになりかねません。

 

コーティングされるからいいのでは?と思うかもしれませんが、本来なかった余計な松脂層ですので、表板の自由な振動を妨げてしまうのです。

 

 

さて、写真をご覧いただきましょう。

 

 

表板はもちろん、指板の上にも松脂がびっしりとこびりついています。

これでは楽器が本来備えているポテンシャルを最大限に引き出せませんし、見た目もよろしくありませんね。

 

ドーナツ状に見える部分は、もしかしたら以前使用していたお客様がご自身でクリーニングに挑戦された後かもしれません。

クリーナーなしで全体を全てやり終えるのは、考えただけでも大変そうですね。

 

でも安心してください。

こんな汚れであっても、職人の手にかかればご覧の通りです。

(通販番組みたいですね。笑)

 

 

 

まだ指板に若干の汚れが残っていますが、ここまでくればあとは簡単です。

クリーニング前後で音を比べてみましたが、明らかに音のクリアさと反応のスピードが違いました。

深みも増している印象です。

 

 

いかがですか?

たかが松脂、されど松脂。

 

夏の暑さによる松脂の固着は、演奏後に毎回クロスで拭き取るだけで防げるものなのです。

是非、楽器も大切に、キレイな状態のまま使ってあげたいですね。

 

あとひとつ、楽器を絹などの布でくるんでいる方、その布を洗ったことはありますか?

せっかく楽器がクリーンであっても、布が汚れていては、シャワーを浴びた後に今まで着ていた服を着るようなものですよ。

楽器だけではなく、ケースやアクセサリ関係のお掃除もしてあげてくださいね。

 

 

 

では、熱中症には十分気を付けて、楽しい8月をお過ごしください!

 

 

お久しぶりです!工房だより6回目ですね。

梅雨明けと共に、いよいよ暑い夏がやってきました。

熱中症にはご用心です。

 

さて、今日はもの言わぬパーツ「ナット」についてお話させていただこうと思います。

時間が空いたので、その分今日はボリュームたっぷりです、ごめんなさい。。。

 

 

では、まずナットは何なのかをお伝えしておきましょう。

ナットは指板とペグボックスの間にあるパーツで、枕のように弦をのせている部位です。

写真でお見せすると、こんな感じ。

 

 

 

さて、この写真をよぉ〜く見てみてください。

お気づきの方もいると思いますが、A線の巻き線(表面をぐるぐる巻いている線)が寄ってしまい、隙間があいているのがお分かりになりますでしょうか?

 

これは、ナットの溝とA線の径(太さ)が合っていないことが主な原因として挙げられます。

更にじっくりと写真を見ていただきたいのですが、A線の溝は向かって左側斜め上に進んでいるように見えませんか?

他の溝も同様に、D線は弦の直径よりも幅の広い溝が、こちらは斜め右上に進んでいますし、G線の溝も広く削られているのが確認できると思います。G線はスチール弦代用なのでナイロン弦だとちょうど良くなるかもしれませんけれど。

本来は、それぞれのペグへと滑らかに弦が進んでいくように溝が切られているのが理想です。

 

 

写真のような感じで、ナットの溝がしっかりと調整されていないと断線の原因になってしまいます。

この状態で調弦をすると、弦はこの滑らかでない溝の中を行ったり来たりすることになり、やがて巻き線がほつれ、切れてしまいます。

ナットは黒檀(エボニー)という堅い木を使っていますが、弦は金属で覆われているので、ある意味のこぎりが木を切るように、段々と溝を深くしてしまうのです。

写真のようにほつれた弦では、のこぎり効果は増しますので、溝がどんどん深くなっていくことになります。

滑りを良くするために、鉛筆で優しく溝をなぞってから弦交換をしたいですね。

 

 

溝が深くなると余計に弦への負荷がかかることになり、新品の弦を張ったのにすぐ切れる、ということが繰り返し起きるようになります。

今までは何ともなかったのに、張って直ぐに新品の弦が切れた場合は、一度まず自分でナットの溝をよく観察してみると良いと思います。

今まではそんなに深くなかった溝が、のこぎり効果でいよいよ深くなってしまったのかもしれません。

弦の切れた場所がナットやペグボックス周辺の場合は、ナットを疑ってみましょう。

 

 

もし、溝が深いとか変な方向に進んでいるのが認められた場合は、お近くのお店や工房へ持ち込んで詳しく点検をしてもらうと良いでしょう。

毛替えへ訪れた際に、よく「一緒に楽器も見ておきますね!」という声を聞いたりしますが、なかなかナットまでしっかりとチェックしてくれるところは少ないように感じます(あくまで主観です)。

弓を受け取るときに「楽器は問題ありませんでしたよ」の声を鵜呑みにせず、もし可能であれば「ナットの溝は問題ありませんか?」と聞き返してみるのも良いかもしれませんね。

 

 

さて、先程の楽器のナット交換をした写真が下の写真です。

 

 

ここから仕上げの磨きと微調整をするのですが、いかがでしょう、弦の両サイドに溝は広がっていませんし、弦も滑らかにペグボックスへ入り込んでいるのがお分かりいただけると思います。

 

ナットは、本当に何も言ってくれないパーツです。

駒のように指板側へ倒れてくることもありませんし、ペグのように固くなったり緩くなって戻ってしまったりしてくれません。

ただずっとそこにいて、弦の末端を静かに支えてくれているところなんですね。

でも、溝が深いとか斜めに入っているなど、正しく調整されていないのを、ナット本人はなかなか訴えてくれません。

訴えてくれるのは、弦が切れたときなのかもしれませんね。

 

人間でいうと肝臓や膵臓のようなところとも言えそうです。

でも、これらの臓器とは違って交換は簡単に行えます!

 

夏の演奏会シーズンや学校の試験時期だと思いますので、一度お近くのお店や工房へ点検へ出掛けてみてはいかがでしょう?

フェルマータ工房では、無料で点検を行っております。

ナット以外にも、心配な点やチェックしてほしい所がある場合は、お気軽にご来店ください!

 

 

ではまた次の工房だよりでお会いしましょう!

 

 

 

フェルマータ工房

TEL 0335577480

住所 練馬区栄町41-12

営業時間 10:00〜19:00

定休日 月曜日、第2・4日曜日

 

 

 

お久しぶりです、工房だよりが1ヶ月半ぶりの更新となってしまいましたが、今日はペグの動きについて書いていきます。

 

と、その前に。

現在、フェルマータ工房では、

 

毛替えをしていただくと、革巻きの無料交換サービス実施中です!!

 

 

今月いっぱいまで、残りわずかですので、革巻きが削れてきている方、違う色の革を巻いて、気分を一新したい方は、是非ご利用ください!

夏のコンサートシーズンの前に、毛替えと革巻きが一気に交換出来てしまうスペシャルな企画です。お見逃しのないようにっ♪

 

 

 

 

 

 

さて、東京は梅雨真っただ中で、先週末は雨が続き、今日は蒸し蒸しと晴れています。

このように天候・気温が安定していないと、楽器自身も体調管理が大変そうです。

 

一番顕著に症状が現れるのが、ペグではないでしょうか。

湿度が高い日が続くと、木材は膨張するのでペグが固く回りづらくなってきます。

回しづらいペグは調弦するのにストレスですよね。

 

もし、ペグを回していて「カキカキ」と音がするようであれば、是非ペグコンパウンドを使っていただきたいと思います。

フェルマータ工房では、ラペラのペグコンパウンドを使用して、回しの固さを調整しています。

 

 

https://www.soundscape-net.com/?pid=88637647

 

 

 

コンパウンド自体の色が薄いため、塗るとほぼ透明になってくれる優れものです。

柘植のペグを使用している方は、黒くならないのでおススメです!

ペグの回し辛さ・調弦のし辛さを感じた際には、ぜひ一度お試し下さい。

 

また、工房フェルマータでも、ペグの調整・修理を承っておりますので、ぜひお問合せ下さい。

ペグコンパウンドを塗るだけであれば、10〜15分程度でお渡し可能です。

 

http://violin-fermata.tokyo/

 

 

ご覧頂きまして誠にありがとうございました。
次回の工房便りをお楽しみに!

 

 

こんにちは

 

今日は先日行ったフィッテイング交換の様子をご紹介します。

Bogaro & Clementeの柘植材フィッティングを使用しました。

 

基本的に、エンドピンとテールピース・顎当てはそこまで難しいことはありませんが、ペグの交換だけは専用の道具や刃物を必要とします。

 

柘植材は染色されているので、ペグの直径出しなどで削った後には同じ色になるように染色する必要があります。

同じ色にするのは職人の腕の見せどころです。

 

 

 

 

やはり良い品質の木材は加工がしやすいです。

末永く使って行ってほしいですね。

 

では次の工房だよりまで。

 

 

 

こんにちは。

 

平成30年度も今日で終わり。明日には新元号が発表になります。

先週は工房不在期間がありましたが、ようやく通常作業に戻ってきたところです。

 

先週の春分の日前後に、台南市にある奇美博物館(チーメイ・ミュージアム)へ、楽器のリサーチへ行ってきました。チーメイ(Chimei)には、ストラドやガルネリ、アマティ一族から、フランスやドイツ、東欧や英国にアメリカまで、世界各国の名器がものすごい数でコレクションされています。弓も同じように1000本近くの名弓が収蔵されています。

一般には公開されないこれらの収蔵楽器を、実際に手に取ってリサーチできる貴重な機会を得ることが出来ました。昨年の同じ時期に、鳥取の三朝で行われたニスリタッチのセミナーを主催してくれた、“みささバイオリンワークショップ”が今回も企画をしてくれています。関係者・参加者の皆さん、ありがとうございます。

 

 

 

このミュージアムでは、イタリアのオールドだけでなく同時代の諸外国の名工たちの楽器も収蔵していて、当時の楽器製作がどのように生まれ、変化し、伝播していったのかを網羅的に調べ実際に見ることができます。一次資料がそこに揃っていることは強みになりますね。これらの楽器を調査・研究して得られた知見も紹介してくれました。

 

世の中には楽器にまつわる一般書籍や専門書(写真集)などが大量に存在していて沢山の知識を得ることができますが、実際に見て、触って・演奏して得られる情報はその比ではありません。もちろん新たな疑問や矛盾なども生じてくるわけですが、自分は無知であることをまざまざと教えてくれる場所や体験は本当に貴重です。職人に完成形はありませんね。

 

昼間は脳にたくさんの刺激と情報を、夜は胃袋にたくさんの台湾料理を詰めて、どちらもお腹いっぱいで帰国しました。今後の自分の仕事に活かしていきたいと思います。

 

 

 

著作権や諸々の事情で、楽器が判別できる写真を上げることは出来ません。採寸・リサーチ・演奏と現地研究員との意見交換に夢中で使える写真をほとんど撮っていないことに気づきました......。何となくの写真を載せて今回は終了したいと思います。

 

では次回の工房だよりまで

 

 

 

 

 

 

 

ヴィオラのナット交換です。

A線の溝が深くなりすぎてしまい、弦が指板に当たってノイズが出てしまう症状を解消させます。

 

同じくD〜C線も深くなっています

 

 

ナット材(黒檀)を接着しました

 

 

成形→溝入れ→弦交換

 

 

今回の楽器は、ナットとネック・指板との接着面が綺麗に平面が出ていなかったので、ナット交換後の音質と音色が驚くほどに改善してくれました。反応も早くなり、芯のある音になっていると思います。ノイズも消えて、音も改善、弦ほつれの心配もなくなって、一石三鳥ですね。

 

弦がナット付近で切れる場合は、ナットの溝に問題があるかも知れません。今まで切れたりしなかったのだからと思ってしまいがちですが、一度お近くの楽器店や工房でナットの点検をしてもらうと良いかもしれませんね。

 

では次回の工房だよりでお会いしましょう。

 

 

 

Vn弓の先端チップを交換しました。

よ〜く見ると、先端部分は3層になっているのが分かると思います。

 

「スティック(木材部分)→黒い層(黒檀やカーボン的素材)→白・銀色の層(種類は沢山)」こんな感じです。

 

今回は黒い層まで欠損していたので、スティック以外の2層を取り換えました。

白い層は、牛骨やマンモス骨などからイミテーションのプラスチック、金属のものまで様々です。

基本はオリジナルの素材を継承して交換しますが、他の素材に変更することもあります。

 

先端部分の仕上げはオールハンドメイドの場合、作者の特徴や癖が出る部分なので、そこを見ただけで誰の弓なのか分かってしまうこともあるんです。

演奏性や値段だけでなく細かな部分にも注目すると、弓(造形)の違った楽しみ方が生まれてくると思いますよ。

 

ではまた次回の工房だよりまで。

 

 

 

 

 

 

連日に渡って酷暑の日々が続いていますが、皆さんお元気ですか?

水分と塩分をこまめに摂って、熱中症にならないように注意したいですね。

 

 

さて、去る7月11日(水)に、このブログのタイトルにもあるダニエラ・ガイダーノさんのガット弦についてのセミナーが都内で行われました。

今日はその模様をお伝えしていきます。

ヴァイオリン職人・製作者はもちろん、リュートや古楽器の製作者も沢山参加していて、賑やかな講習会になりました。

 

 

まずは彼女のプロフィールを。

ダニエラさんは、現代のCordaio(コルダイオ−=ガット弦製作者)の一人として世界で活躍されています。

 

Daniela Gaidano

1974年Torino市生まれ。Novara 音楽院にて最優秀でヴァイオリン演奏のディプロマを修め、その後ヴィオラ演奏のディプロマも修める。後に古楽と同時にガット弦の製造についても研究を始める。
2000年にはVicenzaにあるAquila Corda Armoniche で働き始め、2005年には社員となる。Aquila社では、ガットおよび化学繊維の弦製造に従事し、代表のM.Peruffo氏と共同で様々な研究プロジェクトを実施し、その中にはジェノヴァ市に保管されているニコロ・パガニーニの使用した弦の開封調査も含まれている。
その後、MIM(ブリュッセル・ベルギー)、Ferdinandeum(インスブルック・オーストリア)、Ashmolean(オックスフォード・英国)などの博物館において資料の収集と整理に努めた。この中で特筆すべきはローマの楽器博物館において他の研究者とともに、それまで調査の行われなかった膨大な数の撥弦楽器の調査と記録を初めて採取したことである。
2007年にはVerona音楽院にて起こした論考において17〜20世紀に渡る資料と照らしつつ、abruzzese di Salle (弦の発祥地)において古来の弦製造の方法を知る最後の古老からの直接インタビューも初めて行った。論文はその後、多くの音楽院、大学から出された他の研究の論拠とされ、また弦メーカーSavarez社(仏)の代表Philippe Malliot氏の主催したカンファレンスの内容のベースとなった。
その他、 la Confartigianato di Cremona や British Lute Society、Spira Mirabilis 交響楽団、そして Bolzano のMahlerアカデミーなどのためのカンファレンスを行ってきている。

(セミナー主催HPより)

 

 

内容としては、ガット弦の歴史からはじまり、ガットの製作方法、張力とガット径や音程・ピッチの選択方法など、後半はかなり専門的なものでしたが、参加者からも沢山の質問や意見交換がみられて、素晴らしいセミナーでした。

専門的な話は抜きにして、ブログ映えしそうな印象に残ったお話を少しご紹介したいと思います。

 

その1

皆さんはガット弦はなぜ羊の腸を使うのかご存知ですか?

牛や豚などは使えないのかなぁ、とか考えたことはありませんか?

 

諸説あるようですが、まず豚が使われなかったのは、豚の腸はソーセージに使われてしまったからなんだそうですよ。笑

ガット(弦)は、16世紀にはドイツが一番の生産地域でした。

と言えば、ソーセージに使われてしまったのも何となく頷けますね。

当時からソーセージがメジャーだったのかは判りませんが。

 

また、当時のキリスト教下ではイースターの頃に子羊を食べることが強く習慣としてあったので、この時期に大量の子羊の腸が手に入ったのも原因のひとつなんだそうです。

現代では、羊もそうですが牛の腸の柔らかい部分だけをガットに使ってもいるんだそうですよ。

 

地域的な要因や宗教的側面などが垣間見られて非常に興味深いエピソードのひとつでした。

 

 

その2

アメリカに本社のあるダダリオ社は、実はイタリア発祥の弦製作メーカだった!?

 

これも驚きの事実でした。

私はギターも弾くので、てっきり18世紀とかにアメリカで開業した会社なのかと思っていましたが、ルーツをたどるとイタリアのサレという村でガット弦を製作していた一族がダダリオさんなんだそうです。

現在でも村にはしっかりとD'Addarioと記載された文書が残っているんですって。

確かに言われてみると、ダダリオの"○○ario"はイタリアな感じがしますね。

 

アメリカ(や欧州)で名前の知られた他の弦メーカも、実は同じサレ村が発祥という会社が多いみたいです。

これもまた、イタリア国内の戦乱や他国との戦争で戦火を逃れ、会社を移転した歴史がそこにあるちょっぴり悲しいエピソードでもありました。

 

 

最後に、ダニエラさんが紹介してくれた「ガット弦はこうやって作られている」動画を載せておきますね。

セミナー中にも見せてくれましたが、色々な工程を経て作られていることがお判り頂けると思います。

BBCの番組で放送されたものなので、ナレーションは英語です。。。

洗浄・加工はされていますが、半透明な腸が苦手な方はご注意ください。(血や他臓器は出てきません)

 

 

 

 

動画の3:30辺りの説明で、「乾燥した草とオリーブオイルを染み込ませた布でポリッシュします」と話していますが、もしかしたらピラストロのガット弦「OLIV」の名称ってここから来てるのかも知れませんね。

ダニエラさんも、自作するガット弦にはオリーブ油を使うそうです。

 

 

などなど、専門的な内容以外にも、聞きどころ満載のガット弦セミナーでした。

 

 

 

 

一応、しっかりと勉強してきましたよアピールを。

テキストも購入させていただきました。

後ろのノートには振動弦長と弦径の関係を示す公式が、、、ボヤけて見えませんね。

 

 

長々書いてしまいましたが、ご覧いただきありがとうございました。

来週からはいよいよ8月ですね!

暑さに負けず、元気に夏を乗り切っていきましょう!